『この30年の小説、ぜんぶ』高橋源一郎・斎藤美奈子 著 作家に期待し過ぎでは?
以前から斎藤美奈子さんの書評本を面白く読んでいたのので
この『この30年の小説、ぜんぶ』もそんな気分で読み始めたけど対談のせいか毛色が違う。
「戦後」「戦争中」「マイノリティ」という言葉がやたら出てくる。
それはもう正直うんざりするほどに。
世間は作家に期待しているのでしょうか?
私が小説を読み込めない未熟な読者であるのは自覚しているけどこの高橋源一郎・斎藤美奈子お二人の読み込みが半端ない。
その読み込むキーワードのようなものが上記に挙げた「戦後」「戦争中」「マイノリティ」。
第二次世界大戦、イラク戦争、東日本大震災、9.11、新型コロナウイルスのパンデミック、LGBTQ、ジェンダーなど
これらのことがらに対して無茶苦茶自分ごととして感じていることにびっくり。
私も第二次世界大戦を除けばリアルタイムで生きた者ではあるけれどもほぼ他人事だった。
もう、阪神淡路大震災も東日本大震災も何年に起きたのかすら覚えていないし、
バブル崩壊後失われた30年とかいわれる不況という実感もない。
東日本大震災の後で高橋氏は語る。
作家が一番困るのはこういうときだよね。注文があって生産しているってものじゃないから。やっぱり、状況との関係を勘定に入れないと、書けないったいうか。 p.23
これは純文学畑の作家だからこうなのか作家一般がそうなのか?
私がたまに読むエンタメ系の作家は「~の感じで」という注文が来てそれに合わせて作品を書くと書いてました。
ほんとうに社会のことを知りたいなら、小説を読むべきなのである。なぜなら、小説家たちは、誰よりも深く、社会の底まで潜り、そこで起こっていることろ自分たちの目で調べ、確認し、そして、そのことを、わたしたちに知らせるために、また浮上してくる。そして、そのすべてを小説の中で報告してくれるのだから。 p.5
日本人で一年に漫画や雑誌を以外の本を一冊も読まないという人が50%というご時世にあって私は本を読んでいる方の部類だと思う。
そんな私でもこの『この30年の小説、ぜんぶ』高橋源一郎・斎藤美奈子 著で紹介されている
100冊ぐらいの書籍のうち読んだことがあるのは数冊。名前を聞いたことがある書籍すら10数冊程度。
こんな状況で「社会をしりたけでば小説を読め」といわれてもというのが正直なところ。
マイノリティの声を伝えるのが作家の仕事のようなことをいっているふうにもとれる言葉もあるけど、
『この30年の小説、ぜんぶ』高橋源一郎・斎藤美奈子 著を読み終えてみると
この書籍の中で取り上げられている作家自身もマイノリティではないかというのが正直な感想。
⇒『この30年の小説、ぜんぶ』