今野敏

任侠書房 今野敏 やくざ小説を読んで涙ぐむとは!

目安時間 5分
  • コピーしました

今野敏氏の小説が気に入っていくつかのシリーズを読んでいる。
その中でこの『任侠』シリーズ。
今回は第1作目の『任侠書店』。
随分前に買ったのにそのときにはチラッと読んでそれ以上読む気にならなかった。
ところが不思議なもので今回手にとって読み始めたら面白くて止まらない。

任侠書房のあらすじ

昔気質のヤクザ・阿岐本組(あきもとぐみ)が、組長の気まぐれな思いつきで経営不振の弱小出版社「梅之木書房」を立て直す物語。
昔ながらの義理人情を重んじるヤクザたちが、出版業界の常識に戸惑いながらも、自分たちの任侠道で出版社が抱えるトラブルや問題に立ち向かう。
地元の気質に迷惑を掛けてはいけないと人情味あふれる温かいストーリーが展開され、個性豊かな登場人物たちの奮闘が描かれている。
慣れない世界で右往左往しながらも表の企業で働けることで生き生きとする組員たちの姿と、筋の通ったやり方が、出版社の再生に繋がる心温まる再生物語。

任侠書房の魅力

今野敏氏の作品の特徴として、非常に魅力的な人物があります。
この『任侠書房』でも例外ではなく魅力的なキャラクターに惹きつけられて読む進めてしまいます。

 

阿岐本 雄蔵・・・阿岐本組組長 昔気質の組長で地元の堅気の人には迷惑掛けてはいけない。

地元が繁栄してこそ自分たちの生活も成り立つという人格者。
その人望ゆえに組み関係に広く兄弟杯を交わしている組長がいる。

 

日村 誠司・・・阿岐本組の代貸。 責任感があり心配性(?)のせいか日々いろいろなことに気を配っている。
いざとなれば組のためには命をも投げ出す覚悟でことに当たる。

 

以下、組員として武闘派の三橋 健一、元ハッカーの市村 徹、

元暴走族の二之宮 稔、何故か女が放っておかないモテ男の志村 真吉と個性的な品物。
任侠書房

任侠書房 名声セリフ

読んでいると思わず心に沁みてジワ~っと涙ぐむセリフがある。

日村が闇金から追い込みの仕事をとってきたことを組長に報告すると阿岐本組長は

追い込みってことは、その町工場を丸裸にしつまうんだろう?その人だって、借りたくて丸橋なんぞから借りたわけじゃねえだろう。素人衆を泣かすようなまねしちゃ、阿岐本組は終わりだ。p.13

 

と諭し、町工場と闇金の丸橋の両方の顔が断つ方法を考えるように指示する。

 

 

日村が健一に、自分たちはやくざであって暴力団ではない。誇りを持てと諭す場面。

「我慢だ。何事もじっと我慢するのが本当のヤクザってもんだ。ここで、 腹立ち紛れに嫌がらせでもしたら、それこそ暴力団と呼ばれている連中と同じになっちまうじゃないか」

「でも、どうせ素人から見たら、俺たちだって暴力団なんですよ」

「誇りだ」

日村は言った。
「いいか? 他人様がどう思おうとかまわない。自分が自分のことをどう思っているかが問題なんだ。他人がどうせ暴力団だと思っているからそれでいいなんて思ったときから、てめえは暴力団になってしまうんだ。俺たちはヤクザだ。誇りをなくしたら終わりなんだよ」p.178

 

次はありそうな話ではあるけど、現実には風俗店に手を出していないや組はないかも。

もともと阿岐本組は博徒系なので、ツキは大切にする。阿岐本組が女の絡む商売に手を出ないのは、運を落とす女が必ずいるからだ。いわゆるサゲマンというやつだ。p.217

 

この他、やくざは堅気の人不要な恐怖心を与えないように公共交通機関はなるべく使わず車を使うとか、

新幹線でもグリーン車に乗るとか本物は一般人に気を配ってくれているのだなぁと思いましたが現実はどうかは知りません。

仲間由紀恵の主演ドラマ『ゴクセン』の大江戸一家を思い出しました。

任侠書房

  • コピーしました